バッファロー脱走

朝の送迎バスの中が一瞬ザワついた。

窓の外を見ると、公園のメイン・ゲートから町へと続く道を二頭の
バッファローが気忙しげにのぼっていくところだった。

あと5メートルで一般道との境のフェンス・・というところで、二頭
はフェンスに沿って左に曲がった。ナクル湖国立公園の二重の
フェンスの間(外側と内側のフェンスの間の空間)に入った。

前方を見ると知らせを聞いて駆け付けたらしいKWSの車がいる。


柵の間の狭い空間に違和感を感じたのか、バッファローは踵

を返し、フェンスに沿ってもと来た道を下り始めた。











先日パーク・クリーンの日にバッファローを追い払った若い運転手
の運転する車が、
ゆっくり、ゆっくり、バッファローを追いかける。
パニックにさせず、かつ自由に草を食む余裕は与えない絶妙の
間隔。

メイン・ゲート付近まで戻ったバッファローはフェンスの間を抜けて
無事群れのところへ戻って行った。

日常

今日の洗濯物。
乾期の照りつける太陽のおかげで、朝に洗えば昼には乾く。









黒、緑、黒、緑、黒、緑・・・

なにを隠そう、私の一番好きな色は黄緑色だ。(中央のスカーフの色)

洗濯物からも自分の偏向性がよくわかって可笑しくなった。

洗濯をしたら良い具合にお腹が空いた。(洗濯機は持っていないので手洗い。)

一昨日、任期を終えて今月帰国するナクルの隊員Mからテフロン加工のフライパン
とmwiko(ムウィコ:木のしゃもじ。もっぱらウガリを調理するのに使われる)を
もらった。

昨日、Gのお母さんのお葬式の帰りに通った町で新鮮なスクマ・ウィキ(ケール)を
買って来た。

図ったような組み合わせ。迷うことなくウガリをつくる。












今までで一番上手にできたウガリを、スクマ・ウィキ、玉ねぎ、ニンジン、
ちょっと豪華に(?)卵の炒め物と一緒に、いただきます。

てづくり豆腐












ケニアに住んでいて、なにが一番恋しいかといえば、もちろん日本食。
往復5時間マタツ(ミニ・バス)に乗ってナイロビへ行けば、高額ではあるが、
キッコーマン醤油、味噌、海苔などが手に入る。

最近、私の住むナクルのスーパーで、豆腐が売られるようになり、
隊員の
Mちゃんが買ってみたそうだが、「臭いがきつくて食べられなかった」とのこと。

ならば、と、昔の隊員の機関誌に掲載されていた情報をもとに、豆腐を
手作りしてみた。(写真)これが意外と簡単。日本から持参した練りワサビ
とナイロビで買ったキッコーマン醤油で食す。

味は・・無味・・
気になる臭いもないが旨味もない。

副産物としておからと豆乳ができた。
おからにニンジンと煮干し、出汁と醤油をまぜておかずに。
豆乳には帰国したJICA職員が残していってくれたキナコをまぜてドリンクに。
余すところなくおいしく食べられました。満足。

また試してみようっと。

パーク・クリーン・アップ

いつものごとく、朝、上司が突然オフィスに入って来て言った。
「ゴミ拾い行く?」

ということで、昨日に続き本日も清掃活動をすることに。
今日の舞台はナクル湖国立公園


まずは上司と一緒に車に乗って、清掃ポイントを査定。
結果、公園の入口付近のフェンス沿いを清掃することに決まった。

まずは車でバッファローを追い払い(ゴメンナサイ)、武器を持った
レンジャーをお供にゴミ拾い。

ナクル湖国立公園は町に隣接する国立公園だが、どれくらい隣接している
かというと、これくらい
である。(下の写真参照。フェンスの左側が公園、
右側が住宅地。)












公園の入口付近に住む住民はあまり教育レベルも高くなく、所得も高く
ない。ビニール袋を中心に、ゴム草履、乾電池、プラスチックの酒ボトル・・
なんでも捨てられている。

それが風に乗って、フェンスを越えて、野生動物が歩き回る草原に入り
込むのはまったく簡単なことである。そこにどんな危険なゴミが含まれて
いるかも知らずに、こどもたちはゴミの上を元気に歩き回っている。











今日の参加者は公園の奥の方で、隣接したコミュニティの人々。
バスを降りると、グローブと麻袋を手に、草原に散り、ゴミを拾い始めた。












どれだけゴミを拾っても、コミュニティの人たちがゴミを捨て続けたら
意味がないよね、と同僚と話していたら、なんと公園入口のコミュニ
ティの人たちも、麻袋を受け取って、自分たちの家の周辺(フェンス
の外側)のゴミを拾い始めたではないか!

素晴らしいな~と嬉しい気持ちになっていたら、上司ともめている。
なんと、ゴミ拾いをしたから日当をくれ、と要求してきた。シンナーでも
吸っているのか、表情がうつろだ。
(写真手前が上司、奥がコミュニティの人々)

自分で捨てたゴミだよね?などという理屈は通じない。嫌になるほど
実にケニアらしい・・

上司は「タダであげられる日当はありません。」と要求をはねつけ、
「でも公園内で仕事(日雇いの、主に重労働)があれば呼びますから
仕事をしてから日当をもらって下さい。」と説明していた。

コミュニティ相手の仕事は本当に複雑で難しい。
日本人の私にはなかなか理解が及ばない。











ゴミ拾いを終えて重量計測。数値は低い方が良いのだが、大きな
数値目標は参加者のモチベーションになる。












参加者にジュースとパンが配られ、上司が環境保全に関する
野外レクチャーをする。これが大事だと思う。これがなかったら
単に”ジュースとパンをもらって動物を見る日”になってしまい
かねない。

公園内の自然を維持するにはあなたたちコミュニティの協力
が不可欠で、あなたたちは本当に良くやってくれています、と
励ます。

ケニアは権力社会なので、一般市民が国家組織であるKWSの
ワーデンから直々にお褒めの言葉をもらうというは彼らの自信
につながるようだ。

私は上司は話が長いのが玉にキズだが、話もうまく、情熱的
なので、コミュニティとの対話に向いた人材だ。











久しぶりに職場のイベントに参加できて私も嬉しかった。
お疲れ様でした。

タウン・クリーン・アップ?

出張授業に通っているKimathi小学校の先生から、小学生を対象にした
ナクル・タウンの清掃イベントがあるから、一緒に行かない?と声をかけ
てもらった。

8時にナクル駅で、と言われたが、どうせ遅れるだろうと考え、9時ごろ
着くように出かけた。

駅にはこどもたちが集まっていたが、案の定イベントは始まっていなかった。
しばらくすると、参加者の登録と、参加賞のTシャツの配布が始まった。

Kimathi小学校の校長先生が脅すように、「今日はゴミを拾ってトイレ
掃除までするんだぞ!美穂にできるかな?」と言う。
ケニアでは高等
教育を受けた人がゴミ拾いや掃除なんてするものではないと思われ
ている。
「モチロンしますよ!」と答えたら笑われた

何かが始まる気配は一向にない。(①時間に遅れる)

10時ごろ、主催者らしき白人のグループが到着した。
マーチング・バンドが演奏を始めて、いよいよイベントの始まり
かと思ったら、尻切れトンボな感じで演奏が終わってしまった。

そしてまた待つ。
何かが始まる気配がないばかりか、
なぜ開始が遅れているのかという説明ももちろんない。
(②時間に遅れるのが当然で状況説明がない)

待たされることに慣れているケニアのこどもたちは退屈な様子
など微塵も見せずに、手遊びなどで時間を潰している。










待つこと3時間、11時頃、こどもたちにホウキやモップが手渡され、
ようやくパレードが始まった。こどもたちが持った横断幕を見て
初めて、今日のイベントがフィンランドのHameenlinnanという町と
ナクル市役所の共同イベントであることを知る。
(③イベント内容の詳細などが参加者に十分に周知されない)

駅のある高台からマタツでごった返すステージを抜け、町の入口
にあるラウンド・アバウトを回り、目抜き通りケニヤッタ・アベニュー
に入る。












着いた先はニャヨ・ガーデン。町の端にある市民公園である。
公園の奥に来賓用のテントとイスはセッティングされていたものの、
参加者のテントはない。

乾期のケニア、赤道直下、炎天下。当然こどもたちは木陰を
探し、来賓から離れてバラバラに地面に腰を下ろす。
(④主役は来賓で参加者無視)










こうして無事イベントは始まったのだが、イベントの司会者が酷かった。
外国人が主催のイベントだというのに英語が話せないようで、進行は
もっぱらスワヒリ語で行われた。

来賓あいさつの段取りでは、
フィンランドをホーランドだっけ、デンマー
クだっけ、と言い間違えた挙句、
来賓の名前を知らず、「フィンランドから
のお客さんですけど、名前がわからないんですよね。(ケニア側来賓の)
●●さんに似てるから、フィンランドの●●さんって呼びましょうね。」
という失礼極まりない態度。

ケニアのイベントの司会者というのはコメディアンもどきのような
おもしろおかしいことを言う人が多いのだが、(日本人の感覚では)
下品でくどい冗談を繰り返し、辟易した。(⑤司会者に品がない)

来賓のあいさつの後、来賓やこどもたちの手で公園内に木が植えられた。
フィンランドからの来賓が、苗木の入ったプラスチック・カバーを指し、
「これは捨てずにゴミ箱に入れましょうね。」などと一生懸命声を張り上げて
いたが、押し寄せるこどもたちの歓声に掻き消される。
(⑥秩序を守らせる人も道具もない)

Kimathi小学校のこどもたちも苗木を1本、植えさせてもらった。










次はお決まりの”出し物”。各校が詩の朗読、民族ダンス、歌などを
披露。Kimathi小学校のこどもたちは”木を植えよう”という趣旨の詩を
披露した。








早く終わらせろばかりに司会者にあおられ、各校の出し物が終わった
午後2時、遅いランチが配られる。(⑦開始が遅れても気にせず、
途中で
急ぐことなく
プログラムもずれ込み続ける)これ夕方遅くまで続くのかなー・・
と思っていたら、なんとイベントが終わってしまった。

え?ゴミ拾いは・・?

「もう遅くなったから、しないんじゃない・・?」
(⑧プログラムを詰め込むクセがあり、そのくせに開始が2時間ほど遅れる
のが普通なので、結果として準備したプログラムが終わらない)

ごみ箱が見当たらず、こどもたちはランチで出たゴミをそのまま公園に放置。
(⑨テーマにフォーカスしたプログラムでないため環境イベントの意味がない)

以上、ケニアのイベントの悪いところオンパレード(①~⑨)の本日のイベント
でした。がっかり。

Visiting Day

同僚夫婦には中学校2年生になる娘Sがいて、全寮制の私立学校
に通っている。


今日は学期に一度のVisiting Day(家族面会日)。
私も果物やお菓子を手土産に、学校にSを訪ねた。

お母さんが持って来てくれた牛肉とジャガイモの煮物やマンゴー
を食べて満腹のS。

ケニアの親は総じて教育熱心で、こどもが小学校のうちから全寮制
の学校に通わせる親も少なくない。全寮制だと”こどもがよく勉強”し、
”先生のいうことを良く聞き生活態度も良くなる”そうだ。(ケニアの
先生は厳しく、絶対的な存在。)

しかし・・

「お父さん、明日も来てくれる?」

頭をかしげながら寂しそうな顔で私たちを見送るSを見て、小さい
うちは親と一緒の方がいいのにな、先生じゃ目が届かないこと、
親からしか学べないものもたくさんあるのにな、と思うのは私が
日本で育ったからかな。














マテリアル紛失

休暇を終えてナクルに帰って来た。

数日経ち、ふと気付いた。「アレがない・・」

そう、アレ、年末に作ったアレ。


紛失したアレの説明の前に、私の活動するエデュケーション・センターの
建物の構造について説明しよう。訪問者は
廊下を通って、まずワーデン
のオフィスに着く。(写真右手の扉)















そのドアの左に続く廊下を一歩入ると左手にオフィサーの部屋(写真左手)
そこからさらに5歩入ると右手にレンジャーの部屋(写真奥右手)がある。
ホステルに続く正面の扉は閉まっていることが多い。














つまりレンジャーと私がいるオフィスは訪問者にとって一番奥の
わかりにくい場所にある。

エデュケーション・センターにお客さんが来たとする。ワーデンのオフィスにも
オフィサーの部屋にも誰もいないのを見ると、諦めて帰ろうとする。

日本であれば、お客さんの声を聞いた時点で、廊
下に出て、「こちらにどうぞ」
と案内するところだが、われらがレンジャーは、お客さんがこちらを見つけるま
で息をひそめている。

それではいけない、と思い、ワーデンのオフィスの扉の前に立った時に
見える位置に、貼り紙を出したのだ。それがコレ。












その貼り紙が、休暇からもどったらなくなっていたのだ。
掃除スタッフに聞いても知らないと言い、
残骸すら見なかったと言う。

エデュケーション・センターのホステルには、スクール・トリップでケニアの
学生が大勢やってくる。夜もレンジャーが警備に当たるものの、その夜勤
もレンジャーたちはサボりがちであった。

おそらく宿泊客のこどもたちに持って行かれたのだろう。

エデュケーション・センターの掲示板に掲示されていた環境教育教材が
バブーンに破かれたり、こどもに持っていかれるたりすることは同僚から
聞かされていた。それにしてもこんな貼り紙までなくなるとは・・

悲しいような、嬉しいような・・


教訓:なくなって困るものは、鍵のかからない場所に張ってはいけない

国立公園入園料値上げ

ケニアの国立公園の入園料が改定された。

私の働くナクル湖国立公園の入園料は、ノン・レジデント大人80ドル、
こども40ドルに、東アフリカ・レジデントは大人1,000シル、こども500シルに、
ケニア・シチズンは
大人1,000シル、こども200シルに値上がりした。(*)










大衆食堂で働くウェイターの月給が3,000シル、
中級レストランの門番の月給が6,000シルということに鑑みると
ケニア・シチズン(
大人)の入園料が1,000シルというのは極めて高額である。

数あるケニアの国立公園のうち、ただ二か所、最高位であるプレミアム・パーク
に位置づけられるナクル湖国立公園とアンボセリ国立公園。高すぎて庶民には
手が出ないと思われる入園料の設定は、多すぎる観光客を減らし、他の公園に
分散させるための手段とのこと。

それにしても、ケニア政府に税金をおさめているケニア・シチズンと、非納税者
である東アフリカ・レジデントの入園料が同額というのは疑問。

近隣住民からのプレッシャーの大きいナクル湖国立公園のような公園こそ、
たくさんの一般市民に訪れてもらって、自然保護の大切さを知ってもらうべき
だと思うのですが・・

ライオンを見てみたいけど、入園料が高くて公園には入れず、バブーンやイランド
に畑の作物を荒らされ・・と不満がたまる一方の住民が出てくるよね・・



* 2011年の入園料はそれぞれ60ドル&30ドル、1,000シル&500シル、
500シル&200シルであった。