夜中の足音

草木も寝静まった子の刻。足音が聞こえた。
トットットットットット。
天井裏のトカゲだろうか。
人みたいな足音だ。

トットットットット。
今日はいやに音が大きい。おかしい・・
天井裏ではなく外から聞こえるみたいだ。

ブルルッブルルッ。
鼻息も聞こえた。またイノシシかな?窓を開けて真っ暗闇を見つめる。

トットットットット。
窓のすぐ前を通りすぎて行ったのはシマウマだった。

私の家はコンパウンドの一番奥。迷い込んだシマウマが焦って走り
回っているみたいだった。かわいそうに・・

と思っていたら、今度は玄関の扉のすぐ前で
モシャモシャモシャという
音が聞こえてきた。草食べてる・・こんな夜中に・・



写真は昼間のシマウマ(撮影:E-3)

時計ベルト


知人のマサイの青年から、時計ベルトをもらった。
牛革にビーズの刺繍がきれい。
彼がしていたのを見て、「いいな~これいくら?」と
聞いたら、翌日持って来てくれた。
ケニア人はよく「いいな~これいくら?」と言う。
そう言われたら、プレゼントをするのが礼儀らしい。
日本人の私は、しょっちゅう「いいな~これいくら?」
「日本に帰る時、私にちょうだいね。」と言われる。
真に受けていたら丸裸になってしまう。

獣の鼻息

夜10時半。
窓の外からグルルッグルルッという獣の鼻息が聞こえた。
灯りを消して、ヘッド・ライトの光を外に向けてみるけど何も見えない。

グルルッグルルッ
すごく近い。

グルルッグルルッ
どうやらフェンスのすぐ外側にいるようだ。

グルルッグルルッ
数日前、家のすぐそばにライオンが2頭出たという話を思い出した。
怖くなって2軒隣のマダムKに電話をしてみる。

「ドアを閉めていれば大丈夫よ。」と言われるも、外の音が気になる。

しばらくするとトコトットコトットコトッという足跡が聞こえてきた。

「・・・あ・・ひょっとしてイノシシかな・・?」
「Lala kabisa.(寝ちゃいなさい。)」

肉屋の前












夕方になると、肉屋の前では手作りソーセージが売られる。
楊枝でツンと一刺しで50シル(約60円)と言われた。
高い!!

意外に思ったが、ケニアでは内臓がポピュラー。
nyama(肉)とmatumbo(おなか=内臓)が並んで売られている。

夕方のソーセージは、男性客の軽食として人気。
この日もボダボダ(自転車タクシー)やピキピキ(オートバイ・タクシー)
の運転手さんが集まって、皆でおいしそうにつついていた。

味は良いけど、寄生虫がいそうで、進んで食べたくはない。
ちなみにソーセージの肉は豚ではなく牛。

小さなお客様














イースター連休最終日。昨日のうちに帰って来て
やっぱり良かった。今日はのんびり過ごそう。

2週間ほど前、足にかさぶたがあるのを見つけた。
どうしてこんなところにかさぶたが?と不思議に
思っていた。しかもドンドン大きくなっていく。
かさぶたというよりは血だまり(血袋)のようだ。

そして今朝、着替えをしていたら、「かさぶた」が
ポトンと床に落ちた。拾い上げると小さな足が生え
ている。ゾゾッ!かさぶただと思っていたのはマダ
ニの仲間だったらしい・・さすがの私も即抹殺。

掃除!掃除!

お茶を飲んで掃除を始めると玄関のドアを叩く
音がした。ドアを開けるとKシスターズ(Mr.K
の小学生の娘達)が立っていた。

「家にいてもすることないんだも~ん。」休暇に
退屈しているらしかったが、TVすらない我が家に
来ても、さらにすることはないと思うのだけど・・・

チャイと干しブドウでもてなして、PCのゲームで
遊ばせておく。女の子なのでよくしゃべる。でも
2人とも英語が達者なので会話には困らない。

お昼ご飯を食べに家に帰ったかと思ったら、午後
も遊びに来た。「エヘヘ~。また来ちゃった。」
その間も私はせっせと部屋の掃除。二度とダニに
やられたくない。

夕方になり、Kシスターズのお兄さんが迎えに来
た。「水曜日まで借りててもいい?」私が貸した
スワヒリ語の童話のコピーを抱えて、小さなお客
様たちは帰って行った。

泣いて笑って











今日は家具屋に注文しておいたガス・テーブルを引き取る日。
運転手のMと9時に家具屋に行こうと約束した。(我が職場他
いくつかのケニアの職場では、相応の理由があれば仕事中
出も許される。)

9時半。Mは来ない。
どうしてケニア人っていうのはいつもこうなんだろう?

「どうしてケニア人は約束を破るの?」
率直な疑問を同僚Gにぶつけてみる。
「待っている人がいるのに悪いと思わないの?」
Gは居心地が悪そうに口ごもる。
「ケニア人はそういうこと思わないのよ・・・

いつもは物分かりの良いGだけど、Gもやっぱりケニア人だ!

ネパール人の友人とも何度もこんなやりとりをしたことを思い
出す。ある環境で育った人に、その環境そのものに対する疑
問をぶつけも、その人にはわからない。解決できずにイラ
イラするだけだ。

Gは何も悪くないのに、同意を得られなかったことで裏切られた
ような気がして、自分が八つ当たりをしているようで、話している
うちにどんどん悲くなってきた。

「歩いて行くからいい!」吐き捨てるように言ってその場を去る。
ケニア人なんて大嫌い!
みんなの視線を背中に感じながらズンズン歩いて行った。

家具屋に着いて、どうやってガス・テーブルを運ぼうか思案して
いると、運転手のMから電話が入った。
「Uko wapi?(今どこ?)」

突然入った仕事(KWSでは大抵の仕事は「突然」入る)を終えて、
Mは約束通り私を迎えに来てくれた。

Mがちゃんと約束を守ってくれて、すごく嬉しかった。現金なもので、
家までガス・テーブルを運んでもらうと、すっかり機嫌が直った。
出かける前はあんなにトゲトゲした気持ちでいっぱいだったのに、
エデュケーション・センターに戻って来た時には、友達のところにでも
帰って来たようでホッとした気持ちにさえなった。

ちょうど会議用の昼食の用意ができたところで、他部署の職員も
集まって来て、昼食をこっそり(?)頂く。

同僚Sにお皿を渡されると、自然と顔がニコニコになった。
「スクマ・ウィキ(ケール)、たくさんちょうだい!」と元気良く言うと、
「あ~!mtoto wangu(私の娘)が笑った!」と同僚Rが嬉しそう
声を上げた。

腰に巻いた私のシャツを指差して、 「あんたが走って行っちゃった
から、きっと森に行ってそのシャツで 首を吊るんだって話してたの
よ。」と言って、みんなで大笑いした。

心配させてごめんなさい。
みんなが私のことを好きでいてくれて嬉しい。
朝はケニア人に怒って、昼にはケニア人と笑ってる。
こんなふうにしてケニアを好きになっていくのかもしれない。



写真は、夕方エデュケーション・センター近くに現れたウォーター・
バックのつがい。拡大するとメスの鼻先に止まっているオックス・
ペッカーが見えます。(撮影:E-3)